一般社団法人 薬学教育評価機構

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2016年度 慶應義塾大学 評価報告書

(様式 17) 薬 学教育評 価 評価報告書 評価対象大学名 慶應義塾大学薬学部 (本評価実施年度)平成 28 年度 (作成日)平成 29 年3月2日 一般社団法人 薬学教育評価機構 – 1 – Ⅰ.総合判定の結果 慶應義塾大学薬学部薬学科(6年制薬学教育プログラム)は、薬学教育評価機構が定め る「薬学教育評価 評価基準」に適合していると認定する。 認定の期間は、2024(平成 36)年3月 31 日までとする。 Ⅱ.総 評 慶應義塾大学薬学部は、6年制薬学科と4年制薬科学科の2学科を設置しており、薬学 科では「科学の基盤をもち、医療人としての自覚のもと、高い臨床能力を発揮できる、人 に優しい薬剤師の育成」という教育研究上の目的の下に、入学者受入の方針(アドミッシ ョン・ポリシー)、教育課程の編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)、学位授与の 方針(ディプロマ・ポリシー)を設定し、「医療を取り巻く環境、薬剤師に対する社会のニ ーズ」を反映した6年制薬学教育を行っている。 薬学科のカリキュラムは、カリキュラム・ポリシーに従って構築されており、それは新 旧両方の薬学教育モデル・コアカリキュラムに対応したものになっている。すなわち、ヒ ューマニズム教育・医療倫理教育、コミュニケーション教育は1年次から体系的に行われ ており、薬学、医学、看護学の医療系三学部の合同教育は、チーム医療と多職種連携につ いて共に学ぶ機会を提供する教育として評価できる。教養教育は総合大学の特色を活かし て効果的に行われ、語学教育は基礎的なコミュニケーション能力の向上から、医療現場や 医療の進歩・変革に対応できるより高い英語力の育成へと体系的に実施されている。薬学 専門科目では、基礎から専門性の高い領域へ、座学による知識の修得から実験実習へ、ま た、薬学基礎科目から臨床薬学科目へなど、科目間の関連と学習の順次性に配慮している。 さらに、大学独自の薬学専門教育として、社会のニーズを取り入れた多彩な選択科目、自 由科目、米国、タイ国での4~5週間の海外病院実習も行っている。実務実習では、事前 学習、病院・薬局実務実習共に実務実習モデル・コアカリキュラムに沿って実施されてい る。卒業研究は、臨床実践を深めるアドバンスト科目との組み合わせによる3タイプの選 択必修制になっており、研究室で研究に携わる期間は異なるが、いずれの場合も4年次1 月から6年次の 10 月までの間で、十分な時間を確保して行われており、その成果は、卒業 発表会でポスター発表され、卒業論文として提出される。 学生の受入れは、一般入学試験、指定校推薦による入学者選抜、帰国生対象入学試験、 外国人留学生対象入学試験、塾内進学制度と多様であるが、アドミッション・ポリシーに – 2 – 基づいて適切に行われており、入学者数と入学定員との乖離は小さい。 授業科目の成績評価方法と基準はシラバスに示され、進級判定は学則の規程に基づいて 行われている。学士課程の修了認定は、学則で規定した卒業要件に基づいて行われている。 学生に対する履修や生活に関する指導は、ガイダンスおよびアドバイザー(担任)制度 によって行われており、学生への経済的、心身的な支援体制、ハラスメント対応、就職・ 進路支援体制なども整っている。 専任教員は、各専門分野について研究・教育に優れた実績を有するものが配置されてお り、教員数も大学設置基準を十分満たしている。専任教員の授業科目への配当や職階や年 齢のバランスもおおむね適正である。教員の採用、昇進は、規程に基づいて適切なプロセ スを経て、教育、研究力等を十分に評価して、適切に実施されている。また、実務家教員 が、慶應義塾大学病院薬剤部で研鑽できる制度(OJT: On the Job Training)や、薬学 部附属薬局にて薬局薬剤師としての実務を行う体制も整備されている。職員組織も整って いる。 図書館、講義・演習室、実験室、実務実習事前学習、研究活動のための施設、設備も整 備されており、学習環境も整っている。 社会との連携では、地域の薬剤師会をはじめ、医薬界の関係団体および行政機関と連携 を図っている。また、薬剤師の資質向上を図るために、認定薬剤師研修機関として認証を 受け、慶應義塾大学薬学部認定薬剤師の認定を行っている。 以上のように、慶應義塾大学薬学部薬学科の薬学教育プログラムは、本機構の評価基準 におおむね適合していると判断される。しかし、以下のような問題点が挙げられ、改善が 必要である。 (1) ヒューマニズム教育・医療倫理教育、コミュニケーション能力を育成する教育、実 務実習事前学習、問題解決能力を醸成する教育で、目標達成度を測定する指標を設定 し、それに基づく適切な評価を行うよう改善することが必要である。 (2) 科目間で評価の公平性を保証するために、成績点と評価との対応を各科目の担当者 の裁量に委ねるのではなく点数と評価との対応を明確に規定することが必要である。 (3) 複数の評価項目がある科目では、個々の評価方法の最終成績に対する寄与率を明示 することが必要である。 (4) 卒業の可否判断に直結する6年次の必修科目である「総合薬学演習Ⅱ」については、 追再試験にあたる4次試験の合格基準が明示されていないので、あらかじめ明示する – 3 – ことが必要である。 (5) 薬学部全体の教育研究活動を、6年制薬学教育の向上発展に結びつけて統合的に自 己点検・評価し、その結果を教育研究活動に反映する体制を整備して、恒常的、継続 的に教育研究活動の改善に取り組む必要がある。 慶應義塾大学薬学部薬学科は、本評価での改善すべき点、助言を踏まえ、積極的に改善 に取り組み、薬学教育の更なる向上に努めることが望まれる。 Ⅲ.『中項目』ごとの概評 1 教育研究上の目的 本中項目は、適合水準に達している。 慶應義塾大学薬学部では、慶應義塾大学全体の目的である「本大学は、福澤諭吉創業の 精神に則り、独立自尊の人格を育成し、精深な学術の理論と応用とを研究教授して、広く 社会の先導者を養成すると共に、文化の発展に貢献する」を受けて、薬学部の理念を「本 塾建学の精神に則り、薬学の理論と応用とを研究教授し、医療・創薬に関わる分野で求めら れる学識と能力を培う」としている。薬学部は、薬学科(6年制)と薬科学科(4年制) の2学科で構成されるため、薬学科は教育研究上の目的として「科学の基盤をもち、医療 人としての自覚のもと、高い臨床能力を発揮できる、人に優しい薬剤師の育成」を設定し、 併設した薬科学科との差別化を明確にしている。この目的は、平成 25 年度改訂薬学教育モ デル・コアカリキュラムに併せて提言された「薬剤師として求められる基本的な資質」と も基本的に一致するもので、医療を取り巻く環境、薬剤師に対する社会のニーズを反映し たものとなっている。また、この教育研究上の目的が記載された学部学則の冊子体の配布、 ならびにシラバスにより、教職員および学生に周知している。また、この教育研究上の目 的はホームページにも掲載されて、広く社会に公表されている。 また、平成26年度に薬学部の理念、学科の目的の検証が行われ、教授会の決議を経て決 定されたものを、学部学則第144条の61および61の3として定めている。さらに、学部内に 設置された運営委員会が学部の理念、学科の目的を検証することとなっており、定期的な 検証を行うための組織体制も構築されている。 – 4 – 2 カリキュラム編成 本中項目は、適合水準に達している。 慶應義塾大学薬学部薬学科では、教育課程の編成・実施の方針をカリキュラム・ポリシ ーとして以下のように定め、「シラバス」に収載し、ホームページに掲載して公表している。 ・薬学教育モデル・コアカリキュラムを基本 ・教養教育と倫理教育による高い倫理観と患者への思いやり、チーム医療における協調性 と責任感の醸成 ・外国語教育等を通じた医療分野での国際性の涵養 ・医薬品や化学物質と生命現象を理解するための基礎的な科学力の習得 ・適正な薬物療法を推進するための知識および実践的技能の習得 ・健康増進や公衆衛生の向上のための知識の習得 ・卒業研究を通じた問題発見・解決能力およびプレゼンテーション能力の醸成 このカリキュラム・ポリシーは、平成24年度までは「薬学を学ぶために 本学のカリキ ュラムの特徴」としてシラバスに掲載されていたものを、平成25年度に「カリキュラム・ ポリシー」とし、平成26年度に改訂薬学教育モデル・コアカリキュラムにも対応できるよ う改訂したものである。 カリキュラム・ポリシーは、薬学部運営委員会で審議したのち、教授会・教授総会で審 議して決定されている。また、具体的なカリキュラムの編成はカリキュラム委員会で審議 した後、教授総会で審議し決定されており、教育課程の編成・実施の方針を設定するため の責任ある体制が整備されている。教育課程の編成・実施の方針の教員や学生への周知に ついては、それらを「シラバス」に収載し、ホームページに掲載することで行っている 。 平成27年度においては、2~6年次生には旧カリキュラム、1年次生には新カリキュラ ムが適用されている。旧カリキュラムでは、平成14年の薬学教育モデル・コアカリキュラ ムおよび平成15年の実務実習モデル・コアカリキュラムに基づく内容の科目に大学独自の 内容を含む科目を加えて編成されている。新カリキュラムは、平成25年度の改訂薬学教育 モデル・コアカリキュラムに基づいて編成されており、カリキュラム・ポリシーに従って、 教養教育、倫理教育、外国語教育、基礎科学、薬物療法、公衆衛生、卒業研究等がバラン スよく配置されたカリキュラムとなっている。なお、新カリキュラムでは、科目名が大き く変更されており、科目名から旧カリキュラムとの対応を判断することができないため、 薬学部では新旧カリキュラムの対応表、新カリキュラムの科目と教育内容との関係(基礎 資料3-3)およびシラバスに基づいて、旧カリキュラム科目の単位未取得者が新カリキュ – 5 – ラム科目で再履修する場合の振替科目を決めている。カリキュラムマップについては、旧 カリキュラムのカリキュラムマップ(基礎資料4a)では、学生がどのように自己の学修 が進行していくのかを、モデル・コアカリキュラムとの対応を付けながら理解できるもの になっている。 国家試験などの準備に該当する教育は、4年次の「総合薬学演習I(秋学期 1単位)」、6 年次の「総合薬学演習Ⅱ(通年3単位)」のみである。また、新カリキュラムでは4年次1 単位(選択)、6年次10単位(うち9単位は選択)が受験準備教育に該当する科目となって おり、6年次の演習の単位数が増えている。しかし、卒業研究は4年次1月(新カリキュラ ムでは4年次9月)から6年次の10月まで十分な時間をかけて行われており、「総合薬学演 習Ⅱ」のために卒業研究の時間が圧迫されることはなく、国家試験合格に偏った教育とは なっていない。 カリキュラムの点検と必要に応じた変更は、カリキュラム委員会で検討され、教授総会 で審議、決定されており、カリキュラムの点検・改革を行う体制が整備され、機能してい る。 3 医療人教育の基本的内容 本中項目は、おおむね適合水準に達しているが、ヒューマニズム教育・医療倫理教育お よびコミュニケーション教育において、学修成果を総合して教育の目標達成度を評価する 指標が設けられていないことについて、懸念される点が認められる。 医療人としてのヒューマニズム教育、医療倫理教育、コミュニケーション教育など、医 療人としての態度、その基盤となる知識、技能を学ぶ科目は、旧カリキュラムでは、1年 次「A(1)生命の大切さを知るために-1」、「B(1)薬学への招待」、「B(2)薬学的 保健体験学習」、「B(2)早期体験学習(病院・薬局)」、2年次「A(2)生命の大切さを 知るために-2(生命倫理)」、3年次「A(3)生命の大切さを知るために-3(患者から学 ぶ)」、4年次「実務実習事前学習」および医療系三学部合同教育が配置され、低学年では 生命倫理に関するもの、3年次には薬害被害者を含む患者から学ぶもの、高学年では薬剤 師としての医療倫理に関するものと、ヒューマニズム教育・医療倫理教育、コミュニケー ション教育が体系的に行えるように設定されている(基礎資料1、3、4)。また、新カリ キュラムでも、基本的な構成や内容はほぼ同様で、1年次に「生命倫理」「情報・コミュニ ケーション論」「薬学への招待」「早期体験学習」、3年次に「医療・薬剤師倫理」を中核に、 その他の複数科目の中の数コマが配置されている(基礎資料3-3)。 – 6 – また、薬学、医学、看護学の医療系三学部をもつ大学のメリットを生かし、医療系三学 部合同教育が1、4、6年次に各学年の必修科目に組み込む形で配置されている。これら は、チーム医療と多職種連携について共に学ぶ機会を提供する特色ある教育として評価で きる。しかし、それらの科目の中でも医療安全教育、生涯学習の意欲醸成に関する教育の ために使用されている時間は少なく、これらに関する教育は十分とは言い難いので、更な る充実を期待したい。 「医療全般を概観し、薬剤師としての倫理観、使命感、職業観を醸成する教育」につい ては、新カリキュラムの1年次「生命倫理」で、緩和医療に関わる医学部教員、臓器移植 コーディネーター、助産師などを講師として招き、各講演を聞き、生と死に関わる倫理的 問題のグループ学習を行っており、学外の人的資源も活用して、効果的な学習方法が用い られている。また、新カリキュラム3年次の「医療・薬剤師倫理」も医療人として薬学専 門家に相応しい行動を身につける教育を行う方向で検討されている。 また、「医療人として、患者や医療提供者の心理、立場、環境を理解し、相互の信頼関 係を構築するために必要な教育」については、1年次の「B(2)薬学的保健体験学習」 (新カリキュラムでは「早期体験学習(薬学科)」)で高齢者疑似体験をし、3年次「A(3) 生命の大切さを知るために-3(患者から学ぶ)」で障がい者、リウマチ患者、薬害被害者の 講演を直に聴き、4年次の「実務実習事前学習」で模擬患者(SP:Simulated Patient) の協力下、患者の心理を配慮したアドバンスト服薬指導を行うなど、効果的な学習方法が 用いられている。 なお、ヒューマニズム教育・医療倫理教育に関わる科目の成績を評価するために、知識、 態度などの評価方法とそれらの評価全体に占める割合は定められているが、目標到達度を 評価するための指標がグループ学習への貢献度以外は設定されていないので、指標を設定 し、それに基づいた適切な評価を行うことが望ましい。また、関連科目の学習成果を総合 した目標達成度評価のための指標も設定されていないので、これを設定し、それに基づい た適切な評価も行う必要がある。 なお、「医療人教育の基本的内容」に該当する科目の単位数は旧カリキュラムで42単位(全 体で194単位)、新カリキュラムで36単位(全体188単位)であり、旧カリキュラムでは卒業 要件単位数の1/5(38.8単位)を超えているが、新カリキュラムでは卒業要件単位数の1 /5(37.6単位)よりわずかに少ない(「自己点検・評価書 」p.13 3-1-1表2、3- 1-1表3)。 一般教養科目は、「日吉共通科目」として開講されており、人文科学、社会科学、自然科 – 7 – 学など、幅広い領域にわたり、多様でかつ調和のとれた多数の科目が開講されている。薬 学部の学生が履修できる科目数は上記3分野が319科目、体育実技が229科目となっている。 「日吉共通科目」は、社会および学生のニーズに応じた多数の科目から学生が自由に選択 できる時間割編成になっている。 高校時代に薬学に必須な理系科目の学修が十分でなかった学生に対して、薬学専門領域 への接続を目的とした「基礎数学」、「基礎物理学」、「基礎生物学」が開講されており、初 年次教育への配慮がなされている。 新カリキュラムでは「情報・コミュニケーション論」、旧カリキュラムでは「A(1)生 命の大切さを知るために-1」において、コミュニケーション力を養う教育がなされている。 また、「早期体験学習(薬学科)」、「医療系三学部合同教育の初期プログラム」を中心に、情 報の把握、状況を的確に判断できる能力を醸成する教育がなされている。さらに、「情報・ コミュニケーション論」、「生命倫理」、「医療系三学部合同教育」などにおいて、個人およ び集団での意見を整理し、発表できる能力を醸成する教育が行われている。ただし、これ らの教育の中で、コミュニケーション能力の評価の指標が定められていない。また、それ らの科目の学習成果を総合した目標達成度を評価するための指標を設定し、それに基づい て評価することは行われていないので、適切な評価を行うよう改善すべきである。 英語教育として、新カリキュラムで学ぶ平成27年度の1年次に対しては、ネイティブス ピーカーと米国滞在経験の豊富な日本人英語教員による「薬学研究のためのコミュニケー ションスキル1A/1B、2A/2B」が必修科目として開講され、これに「読む」、「書 く」、「聞く」、「話す」の要素を取り入れている。新カリキュラムで学ぶ平成27年度1年次 生には、その後2~3年次に必修科目「科学と社会A、B、C、D」、3年次に選択科目「医 療人のためのプレゼンテーションスキル1A/1B、2A/2B」、5~6年次に全員が履 修する選択科目「薬学英語演習」が開講されることになっている。一方、旧カリキュラム で学ぶ平成27年度の2~6年次生に対しては、1年次に「F(2)英語Ⅰ」、「F(2)科学英 語ⅠA、ⅠB、ⅠC」、2年次に「F(2)英語Ⅱ」、「F(2)科学英語ⅡA、ⅡB、ⅡC」が 必修科目として開講されており、これに「読む」、「書く」、「聞く」、「話す」の要素を取り 入れている。さらに、3年次には選択必修科目として「薬学英語A、B、C、D」、「医療 薬学英語A、B、C、D」が開講されていて、「薬学英語A、B」「医療薬学英語A、B」 は薬学および医療薬学に関する英文講読、「薬学英語C、D」「医療薬学英語C、D」は医 療現場に対応した語学力育成に重点を置いて、医療現場に対応した語学力育成に努めてい る。また、選択科目であるが、5年次には「Introduction to overseas clinical rotation」、 – 8 – 6年次には「Case Study Practice」が開講されており、これらは「アドバンスト海外病院 実習」の準備科目として、海外の薬科大学等より講師を招いて、海外の病院実習に必要な 英語コミュニケーション能力の育成が行われている。さらに、グローバルな視点で薬剤師 として活躍することを目指す学生(定員12名程度)には、米国、タイ国での4~5週間の研 修を行っている。また、5~6年次に「薬学英語演習」が開講され、最新の英語論文を精 読し討議しており、医療の進歩・変革に対応するために必要とされる語学力を身につける ための教育が行われている。 このように、英語教育については、基礎的なコミュニケーション能力の向上から、科学 論文の書き方、プレゼンテーション能力の育成・向上、さらに医療現場で薬剤師に必要と される語学力の習得、医療の進歩・変革に対応するために必要とされる語学力を身につけ るためのより高い英語力の育成へと、低学年から高学年まで体系的に実施されている。ま た、英語に加えて、選択科目としてドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語、韓国語 が提供されている。 薬学専門教育を効果的に履修するために、ガイダンス時にアンケートを実施して、高校 における数学、物理、化学、生物、地学、語学の履修状況を把握するとともに、高校での 数学、物理、生物の学修が十分でない学生のために、「基礎数学」、「基礎物理学」、「基礎生 物学」を開講し、入学までの学修歴等を考慮した準備教育が適切に配置されている。 早期体験学習については、1年次に「早期体験学習」(新カリでは「早期体験学習(薬学 科)」、旧カリキュラムでは「早期体験学習(病院・薬局)」)を開講し、病院と薬局を訪問 し、薬剤師が活躍している現場の見学や調剤、服薬指導などの体験を実施している。「早期 体験学習」で見学前に薬剤師の職能についてグループ学習をし、見学後、グループ学習を 行うとともに、病院見学の成果をまとめ、ポスターを作成、報告会で発表と総合討論を行 っており、学習効果を高める工夫が行われている。 医薬品の安全使用の観点に基づいた、薬害・医療過誤・医療事故防止に関する教育につ いては、薬害、医療過誤、医療事故の概要、背景、医療人が順守すべき事項、対策、予防、 解決策について、「A(3)生命の大切さを知るために-3(患者から学ぶ)」、「C15(3) テーラーメイド薬物治療を目指して」、「D1病院・薬局に行く前にA」、「D1病院・薬局 に行く前にB」で、合計10コマ15時間行われている。これらの科目では、薬害被害者、臨 床医、また医薬品開発と規制にかかわる立場の人を講師として、講義を行うとともに、そ れに対するレポートの作成、グループ学習を行って評価している。また、医療過誤、医療 事故、調剤業務の中で起こりやすい事故など、複数の具体例を取り上げ、講義を行ってい – 9 – る。これにより、薬害などを学生が肌で感じる機会を提供するとともに、医薬品の安全使 用について科学的な視点と客観的な判断力が養われるよう努めている。 生涯学習の意欲醸成のための教育については、医療薬学・社会連携センターが中心とな って生涯学習プログラムを企画・運営しており、開催する公開講座のほとんどを学生には 無料とし、在学中から生涯学習に参加する機会を与えている。また、その際に、医療現場 で活躍する薬剤師などからも生涯学習の必要性を聞く機会を設けている。さらに、4~6 年次生および大学院生に生涯学習の必要性を周知させるガイダンスを実施し、在学中から 生涯学習に対する意欲の醸成を図っている。しかし、これらは学生の自主的な参加を促す ための動機づけであり、生涯学習に対する意欲を醸成するための体系的な教育が行われて いるとはいえないので、今後は体系的に生涯学習の意欲醸成のための教育が行われること が望まれる。 4 薬学専門教育の内容 本中項目は、適合水準に達している。 シラバスに各授業科目の一般目標と到達目標が明示され、またシラバスには毎回の授業 の到達目標に対応する薬学教育モデル・コアカリキュラムの到達目標が示されており、授 業科目は新旧両カリキュラムについて、薬学教育モデル・コアカリキュラム教育目標のす べてをカバーしている(基礎資料3-1、3-3)。 学習方略は、知識領域には講義、技能領域には実習・演習を用いている。また、態度領 域の学習方略としては、倫理系およびコミュニケーション系科目ではグループ学習と演習、 実務実習事前学習では演習・実習、医療系三学部合同教育ではグループ学習等を基本的に 用いている。このように、学習方略は、学習目的に合わせて効果的に学習できるように配 慮されている。 科学的思考力の醸成に役立つ技能および態度を修得するための実験実習科目は、新カリ キュラムでは、1年次に「薬学基礎実習」(2単位)、2年次に「有機化学実習」、「医薬品 化学実習」、「生薬学実習」、「生化学実習」、「微生物学実習」、「衛生化学実習」の10単位、 3年次に「薬理学実習」、「薬剤学実習」の3単位の合計15単位となっている。また、平成 27年度の2年次生以上が学んでいる旧カリキュラムでは、1年次に実習はなく、2年次に 「薬学実習ⅡA、B、C」の9単位、3年次に「薬学実習ⅢA、B、C、D、E」の9単 位の総単位数18単位となっており、新旧両カリキュラムにおいて、基礎実習は十分に行わ れている。 – 10 – 医師資格を持った薬学部教員や医学部等に属する医師、また、大学病院薬剤部の薬剤師 による講義を多数行うことにより、基礎と臨床の知見を相互に関連付けるよう努めている。 さらに、学外の患者・薬剤師・他の医療関係者・薬事関係者との交流体制があり、「A(3) 生命の大切さを知るために-3(患者から学ぶ)」では障がい者、患者、薬害被害者、医師、 「C16(2)剤型をつくる」では製薬企業よりの講師、「D1病院・薬局に行く前にA」で は日本薬剤師会よりの講師をそれぞれ招き、講義を行っている。 専門科目では、1年次に物理学、化学、生物学の基礎系科目、講義との関連性を意識し た薬学基礎実習、2年次には薬を学ぶ基礎となる科目、3年次には薬とその作用に関する 科目、4年次には疾病と薬に関する科目、4~5年次には実務実習事前学習と実務実習、 5~6年次には卒業研究、アドバンスト病院実習などを配当し、基礎から専門性の高い領 域への順次性、基礎的な知識の習得から実験実習への順次性と相互効果性、薬学基礎科目 から臨床薬学科目への順次性の習得から専門科目への順次性など、科目間の関連を配慮し た配置になっている(基礎資料4)。 大学独自の薬学専門教育として、必修科目「実務実習の前に(7)」0.5 単位、選択必修科 目「アドバンスト病院実習」10 単位、「Introduction to overseas clinical rotation」 1.5 単位、「Case Study Practice」1.5 単位、「アドバンスト海外病院実習」2単位、その 他、選択科目 16 科目(13 単位)、自由科目 12 科目(7.5 単位)、また科目の一部が大学独 自の内容となっている科目があり、この大学独自の薬学専門教育が行われている(「自己点 検・評価書」p.29、4-2-1表1)。これらの大学独自の薬学専門科目は合計 33 科目、総 単位数は 36 単位である(「自己点検・評価書」p.29-31、4-2-1表1)。また、薬剤師の 職能拡大の一環として健康食品管理士やNR・サプリメントアドバイザーの資格取得を可 能にする「健康食品学」「栄養情報学演習」の設置などもユニークな試みである。なお、大 学独自の薬学専門教育の内容については、シラバスの「コア・カリSBO」(SBO:Specific Behavioral Objective)の欄を空白にしているが、積極的に表示するような工夫がなされ ることが望ましい。また、それらの科目は授業の重複開講もない時間割編成となっており、 それらは学生のニーズに合わせて選択可能で、時間割編成上の問題は特にない。 5 実務実習 本中項目は、おおむね適合水準に達しているが、実務実習事前学習において、総合した 事前実習全体としての目標達成度を評価するための指標が設定されていないことについて 懸念される点が認められる。 – 11 – 慶應義塾大学薬学部では、実務実習事前学習として 「D1病院・薬局に行く前にA、B」、 「実務実習事前学習」によって実務実習モデル・コアカリキュラムのすべての到達目標を カバーし、「実務実習の前に(1)~(8)」では実務実習事前学習のアドバンスト科目として 大学独自の内容を加えている。それらの科目の学習方法は、実務実習モデル・コアカリキ ュラムに沿っている。また、時間数は講義56コマ、実習・演習が126コマの合計182コマで ある(基礎資料6)。実施場所は実務実習事前学習専用の実習室を含めて、それぞれに適し た施設で実施されている。 実務実習事前学習は、講義を薬学部教員、病院薬剤師、薬局薬剤師、歯科医師が担当し、 実習・演習では薬学部教員 26 名、病院薬剤師延べ 24 名、SP延べ 92 名、実務実習を修了 した学生(SA:Student Assistant、TA:Teaching Assistant)延べ 88 名が指導とその 補助に当たっており、適切な体制の下で行われている。また、実習の終了する時期に薬局 における処方せんの流れを意識した総合実習を実施し、薬剤師業務に必要な技能、態度を 再確認している。また、アドバンストの事前学習として「実務実習の前に(1)~(8)」を 5年次4月に実施し、薬剤師業務に必要な技能、態度を再確認している。さらに、実務実 習を平成 27 年度は5年次の5月から全員行い、その直前の4月に医療現場で必要とされる 最新の知識などの講義を行っており、実務実習事前学習と実務実習開始の時期が離れない ようにして実務実習における学習効果を高めるように配慮がなされており、事前学習の時 期は適切である。また、実務実習事前学習の評価は、講義は定期試験、レポートなど、実 習・演習は様々な提出物(演習課題、ワークシート、自己評価や学生間・模擬患者による 評価、実習後の振り返りなど)、参加、態度などにより評価している。各科目についての評 価方法と基準については定められているが、それらを総合した実務実習事前学習全体とし ての目標達成度を評価するための指標は設定されておらず、指標を設定して適切に評価す ることが必要である。 学生が実務実習を行うために必要な能力を修得していることは、薬学共用試験(CBT: Computer Based TestingおよびOSCE:Objective Structured Clinical Examination) の薬学共用試験センターが提示する合格基準に従って評価し、確認している(「自己点検・ 評価書」 p.36、5-2-1表1)。薬学共用試験の実施時期、実施方法、合格者数および合 格基準はホームページで公表されている。なお、受験者数は公表されていないが、「自己点 検・評価書」には記載されている(「自己点検・評価書」 p36、5-2-1表1)。また、学生 への合格基準の説明は配布資料を用いても行われている。 薬学共用試験の実施に当たって、OSCEでは、学内にOSCE実施委員会が設置され、 – 12 – 本委員会が中心となり、教職員全員、SP、病院・薬局の薬剤師、TA、SAなどが協力 して運営に当たり、薬学共用試験センターの「薬学共用試験実施要項」に基づき、慶應義 塾大学薬学部が作成した「薬学共用試験実施対応マニュアル」と「平成27年度薬学共用試 験実施に向けて」、「薬学共用試験OSCE学習・評価項目および医薬品リスト」、「薬学共 用試験OSCEを受験する皆さんへ」、「2015年OSCE注意事項」に基づいて円滑に行わ れている。CBTにおいても、CBT実施委員会が設置され、本委員会が中心となり、多 くの教職員が協力して運営にあたり、薬学部が作成した資料「CBT体験受験実施につい て」、「平成27年度薬学共用試験CBT実施の手引き/実施マニュアルA、B」、「平成27年 度薬学共用試験CBT実施の手引き/実施マニュアルD」、「慶應義塾大学薬学共用試験実 施対応マニュアル」、「平成27年度CBT体験受験実施要領」、「CBT本試験実施について」、 「平成27年度CBT本試験実施要領」を配布して円滑に実施されている。また、CBTお よびOSCEが適正に行えるように、学内の施設と設備が適切に整備されていて、問題な く実施されている。 「実務実習委員会」を設置し、実務実習施設との連携のもと、実務実習が円滑に実施さ れるように対応している。実務実習の実施に当たっては、医療薬学部門(病院実務実習担 当)と社会薬学部門(薬局実務実習担当)からなる「医療薬学・社会連携センター」が責 任をもつ体制としており、両部門はお互いに連携しながら、実務実習の計画、運用、実習 施設の調整、学生指導、学内教員との連携、実務実習報告会の企画・運営、問題発生時の 対応などを行い、また学生課が事務的な対応を行い、実務実習の実態把握に努めている。 薬学科の学生に対して、入学直後に健康診断、結核診断、流行性ウイルス感染症の抗体 価検査、B型肝炎ウイルスの抗原・抗体価検査を行い、その結果、抗体価が基準に満たな い学生には予防接種を実施するように指導している。これらの記録は、大学の保健管理セ ンターが管理し、実務実習開始前に学生全員の健康診断、予防接種などの実施状況を確認 している。また、実務実習には全教員が参画し、Webの実務実習指導・管理システムを 利用して実務実習の進捗状況を確認し、定期的に学生、指導薬剤師と意見交換をしている。 また、卒業研究配属講座の教員は、主に実務実習開始後1回目の実務実習施設への訪問お よび実務実習終了後時の実務実習施設開催の成果発表会への参加を行っている。また、年 2回行う実務実習報告会には全教員が参加している。 実習施設への配属は、4年次に実務実習施設の情報を提示して学生の希望調査を行い、 その結果に配慮しつつ、病院・薬局実務実習関東地区調整機構との調整を含め、通学経路 や交通手段に配慮するなど、可能な限り公平に行っている。なお、遠隔地における実務実 – 13 – 習は平成27年度1件行われており、開始前に医療薬学・社会連携センター教員が実習先を 訪問し、指導体制、実習環境などを確認し、実習開始中も教員が訪問するとともに、We bの実務実習指導・管理システムにより実習の状況の確認を行い、実習および生活の指導 を十分行っている。 実務実習の受入施設については、医療薬学・社会連携センター教員が事前に訪問し、施 設の実習環境や実習準備状況を確認している。また、事前訪問時に指導薬剤師と面談し指 導方針、指導体制を確認するとともに、実習環境、実習の準備状況などを実地確認してい る。 実務実習の教育目標(一般目標・到達目標)は、実務実習モデル・コアカリキュラムに 準拠している。学習方法、時間数、場所等が実務実習モデル・コアカリキュラムに沿って 実施されていることは、医療薬学・社会連携センター教員による実習施設への訪問、We bの実務実習指導・管理システムによる日誌やSBOsの評価状況により確認している。 なお、Webシステムを利用しない施設については紙媒体で状況の確認をしている。実務 実習の期間については、実習施設との契約時に11週間の実習期間を明示した上で契約して おり、この実習期間が守られていることをWebシステムの日誌により確認している。な お、連休などで期間が不足する時には、補講日を設定したり、実習開始時期を早めたりし て対応している。 実務実習開始前には、医療薬学・社会連携センター教員が実務実習先を訪問して事前の 打ち合わせを行っている。また、実務実習開始前の説明会と実習終了後の報告会に、指導 薬剤師を招いて連携を図っている。さらに、実習期間中に教員が訪問し、実習の状況確認、 学生指導、指導薬剤師の意見や評価の確認などを行っている。 実習に参加する学生には、実習前に関連法令や守秘義務等の遵守について説明と指導を 行い、諸規則の遵守や個人情報・法人機密情報の保護等に関する誓約書を提出させている。 さらに、実習施設に対して、その施設の求めに応じて、実務実習施設の諸規則の遵守・守 秘義務などに関する誓約書を提出している。 実務実習の評価基準についてはシラバスに明記し、実務実習説明会で学生、実習施設の 指導薬剤師に事前に説明している。また、期間中には、教員がWebシステムを用いて学 生の日報、指導薬剤師のコメント、さらにSBOごとの学生の自己評価と指導薬剤師の形 成的評価を共有して、助言できるようになっており、学生、指導薬剤師、教員(医療薬学・ 社会連携センター教員および卒業研究配属講座の教員)の三者間で評価のフィードバック が適切に行われている。実習終了後は実務実習報告会のポスタープレゼンテーションを医 – 14 – 療薬学・社会連携センター教員および卒業研究配属講座の教員が評価している。 さらに、実務実習の期間中、学生、実習施設の指導者、医療薬学・社会連携センター教 員および卒業研究配属講座の教員の間で、Webの実務実習指導・管理システムにより、 実習内容、実習状況およびその成果に関する評価について相互のフィードバックが実習期 間中に適切に行われている。実習終了後での実習内容、実習状況およびその成果に関する 意見は、学生の場合にはWebの実務実習指導・管理システム、実務実習自己評価シート、 実習終了後アンケート等により、指導薬剤師、教員の場合には実習終了後に開催される実 務実習報告会、アンケートで聴取している。実務実習の総合的な学習成果の評価は、出欠 状況、実習日誌、到達度、実習態度、実習報告書により行われている。 6 問題解決能力の醸成のための教育 本中項目は、おおむね適合水準に達しているが、卒業研究の最終的な評価を指導教員だ けで行っており、最終評価の基準と客観性が保証されていないことに懸念される点が認め られる。 慶應義塾大学薬学部薬学科では、「卒業研究」を選択必修科目として実施しており、アド バンスト実習科目との組み合わせで単位数の異なるA、B、Cに分かれている。「卒業研究」 の実施時期は、4年次1月~6年次10月であり、「卒業研究A」は「アドバンスト病院実習」、 「アドバンスト海外病院実習」を履修しない学生が対象で、実質約1年間、23単位、「卒業 研究B」は「アドバンスト病院実習」を履修する学生が対象で、「アドバンスト病院実習」 の履修期間3か月、10単位を除いた9か月、13単位、「卒業研究C」は「アドバンスト海外 病院実習」の履修期間1か月、2単位を除いた11か月、21単位で実施している。これによ り、卒業研究には履修に対する多様性を持たせており、その中で、すべての学生が9か月 以上、13単位以上の卒業研究を実質必修として行うことができるようにしている。なお、 新カリキュラムでは「卒業研究」の構成が変更されており、4年次9月~6年次6月で「卒 業研究1」が、実質的な実施期間約1年、18単位の必修科目として行われることになってい る(基礎資料4b)。 卒業論文は、作成要領に従って作成した「卒業研究論文」として提出することが必須で ある。また、卒業研究論文の評価は、評価の指標を示した「卒業研究評価シート」を用い て行われており、その評価項目の中に「研究成果の医療や薬学における位置づけを考察す ること」が含まれている。卒業研究発表会は、6年次の10月末にポスター発表の形式で、 学部主催で開催されている。 – 15 – 「卒業研究」の評価では、卒業論文や卒業論文発表会におけるポスター発表および質疑 応答などを基にして、「卒業研究評価シート」を用いて学生の問題解決能力の向上を評価し ている。「卒業研究」の評価に当たる教員は、卒業論文発表会では2名以上で質疑を行って いるが、最終的な評価は指導教員だけで行っており、評価の基準と客観性を保証する仕組 みが確立されているとは言い難い。 問題解決能力の醸成を意図した学習を組み入れている科目として、旧カリキュラムでは 1~3年次までに体系的に配当された「生命の大切さを知るために」の3科目、4~6年 次の卒業研究、1年次、4年次、6年次の医療系三学部合同教育と、全学年にわたって配 当されており、問題解決能力の醸成に向けた教育が体系的に実施されている。それらの科 目では、授業内容に合わせて、参加型学習、グループ学習、自己学習など、学生が能動的 に問題解決に取り組めるよう学習方法に工夫がなされている。 しかし、問題解決能力の醸 成に向けた教育科目において、目標達成度を評価するための指標は設定されておらず、適 切な評価が行われていないので、改善が必要である。また、「卒業研究A」、「卒業研究C」 はそれぞれ23、21単位であるので、これらの科目を履修している学生は、これだけで18単 位を越えている。一方、「卒業研究B」を履修している学生は、他の能動的学習法を行って いる科目を加えても18単位には満たない。なお、新カリキュラムでは「卒業研究1」18単 位が必修科目となっている(基礎資料4b)。 7 学生の受入 本中項目は、適合水準に達している。 慶應義塾大学薬学部では、大学の目的と薬学部の教育研究上の目的に基づき、入学者受 入方針(アドミッション・ポリシー)を「福澤諭吉の建学の精神は、独立自尊の人格を育 成し、気品の泉源、智徳の模範となり全社会の先導者たる人を養成することである。薬学 部では、建学の精神に則り、医療・創薬に関わる分野で求められる学識と能力を培うこと を目的に薬学の理論と応用とを研究教授する。その目的を理解し、化学、数学、語学 (英 語)の基礎力と薬学を学ぶ強い意志を持つ学生の入学を求める。」と定め、薬学科ではさら に、「医療薬学を学び薬剤師の資格を持って社会に貢献する意欲のある学生を求める」とし ている。指定校推薦による入学者選抜要項(定員30名)には、さらに「慶應義塾大学薬学 部薬学科が望む高校生像」として具体例を挙げている。 アドミッション・ポリシーは教授会で決定し、その検証は運営委員会で行われている。 アドミッション・ポリシーはシラバス、ホームページ、「School Guide」、「受験生のみなさ – 16 – まへ」などに掲載されており、学生の受入れに関する方針は入学志願者に対して周知され ている。 入学者選抜は、薬学部教授会の責任の下で行われている。入学試験業務は、薬学部長が 任命する正副入試事務長(教員)を中心に、入学センターの管理下で厳正に実施されてい る。入学試験問題の作成、採点は薬学部教員が担当している。 一般入学試験、帰国生対象入学試験、外国人留学生対象入学試験においては、入試結果 に基づき、薬学部の入試合否判定会議において、厳正な合否判定を行っている。指定校推 薦による入学者選抜においても入学者の決定は薬学部教授会で承認している。入試には、 理科(化学)、数学、外国語(英語)の学科試験による「一般入学試験」、指定校による推薦 と指定の科目の単位取得状況、および小作文等の提出書類で判定する「指定校推薦による 入学者選抜」、理科(化学)と英語の学科試験、小論文試験、面接試験による「帰国生対象 入学試験」、理科(化学)と英語の学科試験、日本語作文試験、面接試験による「外国人留 学生対象入学試験」により実施している。指定校については、入試制度検討委員会におい て見直しを行っている。また、塾内一貫教育校から、生徒の希望と一貫教育校の判断で入 学者を受け入れる「塾内進学制度」による入学もある。編入学による学生の受け入れはな い。 慶應義塾大学薬学部には、学部内での転学科制度があり、3年次に面接を含む転学科試 験を行い、4年進級時に転学科できる。転学科の受け入れは薬科学科と薬学科の定員がそ れぞれ1.1倍を超えない範囲で行われ、平成27年度の実績は、薬科学科から薬学科へ6名、 薬学科から薬科学科へ9名の志願者があり、全員が合格した。 最近6年間における、薬学科の入学定員数に対する入学者数の割合(充足率)は、平成 23年度では1.15倍、平成28年度で1.13倍と1.1倍を超えたが、その他の年度では1.1倍を超 えておらず、6年間の平均は1.08倍であり、最近6年間の入学者数が入学定員数を大きく 上回っていない(基礎資料7a)。また、いずれの年度も入学者数が入学定員数を下回って いない(基礎資料7a)。 8 成績評価・進級・学士課程修了認定 本中項目は、点数と評価との対応において、科目間で公平性が保証されていないこと、 複数の評価項目がある科目について最終成績に対する各項目の寄与率の設定がなされてい ないこと、および「総合薬学演習Ⅱ」の追再試験にあたる4次試験の合格基準の設定方法 に問題があり、適合水準に達していない。 – 17 – 慶應義塾大学薬学部では、科目ごとに成績評価の方法と基準を設定し、それらをシラバ スに記載して学生に周知している。成績評価は、定期試験で評価する科目では試験点数、 実習・演習科目では授業への参加、態度、レポートなどの評価結果を点数化して項目ごと に設定した割合で計算した合計点数に基づく、A、B、C(以上が合格)、D(不合格)の 評語による4段階評価(成績点ではA+、A、B、C(以上が合格)、D(不合格)の評語 による5段階評価)で行っている。各科目の点数(10 段階の素点(0~9))と最終的な 評価(評語A~D、成績点A+~D)の対応はシラバスに記載されている。しかし、合格基 準がシラバスの「成績評価について」には素点5以上、評語でCより上に相当と統一的に 記載されているが、各科目のシラバスの中では、合格点は 50%以上、60%以上 、65%以 上、70%以上などと科目によってまちまちで、点数と評価との対応が各科目の担当者の裁 量に委ねられていることから科目間で評価の公平性が保証されていないことが懸念される。 成績評価の厳正さを保つためには、評価段階と点数との対応関係を学則や履修規程で定め ておくことが必要である。また、演習、実習科目のシラバスには、合格基準が明記されて いないものがあり、評価に複数の項目がある科目では、各評価項目の科目評価全体におけ る割合や合格基準をシラバスに明記していない科目が散見される。その他、出席を含む複 数の評価項目があり合格基準が 60%となっている科目で出席率の評価が 60%以上になっ ている(出席だけで合格する可能性がある)など、評価方法を複数にする趣旨にあってい ない例も見られる。厳正な評価を行うには、全ての科目において、最終成績に対する個々 の評価項目について、適正な寄与率を設定し、明示することが必要である。また、出席を 評価項目に含める科目は授業への参加が学習成果に直結するものに限定し、出席から学習 成果を評価する指標を設けることが必要である。さらに、卒業学年の必修科目である「総 合薬学演習Ⅱ」では、成績評価のための試験実施方法が他の科目とは異なり定期試験に相 当する試験は1~3次の3回に分けて行われ、合格しなかった学生に対して行う4次試験 の合格基準も予め明示されていない。 成績評価の結果はWebにより、学生に通知するとともに、保証人に対しても郵送で通 知している。また、アドバイザー制度があり、席次はアドバイザーに通知され、アドバイ ザーは学生より要望があった場合は、当該学生に伝えることとなっている。 進級は、学則で規定された進級基準に基づいて判定されている。進級基準と留年の取り 扱い等は学部学則およびシラバスに明記され、新入生ガイダンスおよび各学年のガイダン スで学生に周知されている。進級判定は、進級判定会議において、進級基準に基づいて公 正かつ厳格に行われている。留年生に対しては、卒業研究配属以前はアドバイザー制度に – 18 – よるアドバイザー、研究室に配属される4年次以降は卒業研究担当の教員、さらに6年次 を2回行う留年生には卒業研究担当の教員と薬学教育研究センターの教員によるダブルア ドバイザー制により、学習指導、生活指導を行っており、教育的配慮が適切になされてい る。 留年生に対して上位学年配当の授業科目の履修を制限する制度はないが、上位学年配当 の授業科目の履修の申請があると、時間割上可能であっても、当該科目担当教員が履修の 可否を判断して教授会で承認する制度になっており、不適切な履修を制限できる。 学生の在籍状況(留年・休学・退学など)は入学年次別に分析され、把握されている(基 礎資料2)。平成27年度まで過去5年の留年生は、38~62名であり、総在学生の4~6%程 度である。また、過去5年の休学者は3~8名、退学者は4~20名、薬科学科への転出者 は7~19名であり、学生の在籍状況(留年・休学・退学)に年度による大きな変化はない (基礎資料2)。休学や退学を希望する学生にはアドバイザーが中心となって対応している。 慶應義塾大学薬学部薬学科では、学位授与の方針を「ディプロマ・ポリシー」として以 下の8項目で設定している。 ・6年以上在籍し、所定の単位を修得 ・医療人としての広い教養を身につけ、高い倫理観、使命感を有していること ・医薬品適正使用の基盤となる科学を修得していること ・医療人として必要なコミュニケーション・プレゼンテーション能力を修得していること ・医薬品の専門家としてチーム医療に貢献できる能力を修得していること ・地域保健医療に貢献できる能力を修得していること ・医療薬学領域における問題発見・解決能力を修得していること ・生涯を通じて国内外の最先端の医療知識を取り入れ活用する能力と態度を有しているこ と これらは、薬剤師養成教育に課せられた基本的な使命と薬学科の教育研究上の目的に基 づいて設定されている。このディプロマ・ポリシーは、教授会で決定されている。ディプ ロマ・ポリシーはシラバス、ホームページなどに掲載され、教職員および学生に周知され るとともに、ホームページを通して、広く社会にも公表されている。 学士課程の修了判定基準となる卒業要件単位数は学則144条で規定されており、シラバス に記載することで学生に周知されている。学士課程の修了判定は、助教以上の全教員が出 席する卒業判定会議で、公正かつ厳格な判定が行われている。また、6年次留年生に対し ては、先に述べたダブルアドバイザー制により学習をサポートするなど、適切な教育的配 – 19 – 慮がなされている。 教育研究上の目的に基づいた教育における総合的な学習成果の評価については、「実務実 習発表会」、「卒業論文」、「卒業研究発表会」、「総合薬学演習Ⅱ」の評価で行っているとし ているが、それらはそれぞれは単独に評価されており、この基準が求める総合的学習の趣 旨に合致しているとは言えない。教育研究上の目的に基づいた6年間の教育プログラムを 俯瞰したアウトカム評価のための指標設定、その指標に基づく総合的な学習成果の測定が 行われることが望まれる。 9 学生の支援 本中項目は、適合水準に達している。 慶應義塾大学薬学部では、教育課程の成果が十分に挙げられるように、新入生ガイダン スを行い、大学および薬学部の理念、教育研究の目的、薬学教育の全体像、教養教育、学 生生活全般に関する事項などについて指導している。また、4月に、各学年に対する履修 指導ガイダンスを行っている。さらに、アドバイザー制度があり、学生の学習状況に応じ てアドバイザーが履修指導および学習相談を行っている。 高等学校での数学Ⅲ、物理基礎・物理、生物基礎・生物の未履修者および当該科目の学 修が不十分な学生に対して、それぞれ「基礎数学」、「基礎物理学」、「基礎生物学」の履修 を推奨している。また、指定校推薦による入学者では英語、数学、物理学、化学、生物学 の指定した科目の単位取得を推薦の要件とするとともに、入学までに高校の数学と化学の 問題集での学習を課し、生物の指定学習書での学習を推奨している。 学生の経済的支援制度には、大学独自の奨学金、日本学生支援機構、民間団体、地方公 共団体等の奨学金について、学生課に情報提供、相談の窓口を設けるとともに、冊子体、 ホームページ、4月の学年毎のガイダンスでの説明により周知している。特に、給付型の 大学および学部に独自の奨学金制度が充実しており、平成27年度には65名の薬学科生が受 給している。 学生のヘルスケア、メンタルケア、生活などに関する相談のために、各キャンパスに学 生相談室が設置されており、薬学部の芝共立キャンパスの学生相談室は、平日は毎日開室 し、1名カウンセラーが在室して、学生の様々な相談に対応している。学生相談室につい ては、ホームページなどにより周知されている。また、学生の健康維持のために、薬学部 には保健管理センター芝共立分室があり、保健師が1名常駐しているとともに、医師が週 3日来室している。定期健康診断は各学年の4月に行っており、平成27年度の薬学科の学 – 20 – 生の健康診断受診率は1、4年次生が100%で、全学年の平均受診率は99.6%である。 ハラスメント防止のために「慶應義塾ハラスメント防止委員会規程」が設定され、ハラ スメント防止委員会が設置されている。また、ハラスメントの相談窓口として、各キャン パスに相談教員・職員各1名が相談員となっている。ハラスメント防止に関する学生への 広報については、慶應義塾ハラスメント防止委員会のホームページでの広報、各種パンフ レット、相談窓口カード、チラシの配布を行っている。 身体に障がいのある者に対して、入学試験において、事前に慶應義塾大学入学センター に届け出ることによって、別室受験、補助者同伴受験などの機会を提供するよう配慮して いる。また、キャンパス内のバリアフリー化に努めており、3つある建物間での車椅子で の移動を可能にするために各建物の3階の床の高さを同じにし、障がい者用トイレも設置 している。しかし、視覚障がい者等に対する設備上の配慮をさらに充実させること、建物 のバリアフリー化をさらに進めることなど、障がい者のための施設・整備をさらに進める ことが望ましい。また、実習科目にサポートが必要な場合には、TA、SAが個別に対応 することとなっている。 学生の進路選択に関する支援をするために、就職・進路委員会が設置され、それを学生 課の就職担当が支援している。就職・進路委員会は、就活事典を作成、学生に配布してい る。また、2年次生以上に対して、年数回の就職ガイダンス、さらに将来像セミナー、M R体験セミナー、企業の人事担当者によるセミナーなどを行っている。また、ホームペー ジに就職関係の情報を掲載している。 学生の意見を収集するために、学部においては学部長に直接意見を伝えるためのシステ ムを有しており、実際に学生から受動喫煙の害への意見が出され、キャンパス内全面禁煙 とする決定がなされた実績がある。また、学生の授業に対する意見を教育に反映するため に、教員にオフィスアワーを設け、シラバスに記載し、授業に対する学生の意見などを収 集できるシステムにしている。また、授業担当教員は「授業を改善するための調査」を行 って、授業に対する学生の意見を収集している。 実験室や研究室で学生の安全を保つために、最初の実験実習(平成27年度1年次生では 「薬学基礎実習」、平成27年度2~6年次生は「薬学実習ⅡA」)において、実習中の事故 発生時の対処、実習中の自己および他者に対する安全配慮、薬品の安全な取り扱いなどに ついて注意を喚起している。また、実習は約220名の学生に対して3~5名の教員、最大4 名までのTA、SAを配置し、実験中での学生の安全を保つようにしている。ただし、学 生実習室および研究室における学生の安全を確保するために必要な設備のさらなる充実が – 21 – 望まれる。 消火器、屋内消火器、非常口の場所を記した避難経路図を作成し、各教室に掲示してい る。また、学生に学生教育研究災害傷害保険など、各学年にカリキュラムに応じた適切な 傷害保険、損害賠償責任保険などの保険に加入するよう努めている。さらに、事故や災害 に対する消防計画、災害対策などの対応が策定されており、毎年ガイダンス期間中に防災 訓練も実施されている。また、救急時の対応マニュアルを各部署に掲示するとともに、大 地震対応マニュアルを学生および教職員に配布して周知している。 10 教員組織・職員組織 本中項目は、適合水準に達している。 慶應義塾大学薬学部は、6年制の薬学科と4年制の薬科学科の2学科を設置しており、 平成27年度の薬学科の定員は、1~5年次が150名、6年次が180名、計930名であり、大学 設置基準に定める薬学科の専任教員数は28名である。これに対して、薬学科の専任教員数 は53名であり、大学設置基準に定められている専任教員数を満たしている(基礎資料8a)。 また、薬学科所属の教授は14名であり、設置基準の専任教員必要数(28名)の半数(14名) 以上が教授であることを満たしており、実務家教員は11名で、大学設置基準で必要とされ る5名を満たしている(基礎資料8a)。なお、薬科学科の専任教員(薬学科兼務)は18名 であり、薬学部全体の専任教員は71名である。教員一人当たりの学生数は薬学科で17.5名、 全体で13.1名であり、20名は超えていない。専任教員の構成については、教授、准教授、 講師、助教の数と比率は、それぞれ薬学科で14名(26%)、14名(26%)、11名(21%)、14 名(26%)、全体で20名(28%)、18名(25%)、13名(18%)、20名(28%)となっており、 極端な偏りはなく、職階構成はほぼ適切に構成されている。 教員は「薬学部教育職員任用資格規則」に定める教育歴、研究歴などを有し、専門分野 において教育上および研究上の優れた実績を有する者が配置されている(基礎資料15)。実 務家教員に関しては、「薬学部教育職員任用資格規則」に定める教育歴・研究歴等を満たさ ない場合でも、専門分野について優れた知識・経験および高度の技術・技能を有している、 病院・薬局での薬剤師としての実務経験を有する者が配置されている(基礎資料15)。また、 薬学部の専任教員は5年任期で採用され、再任に際しては、教育および研究の実績に関す る基準を満たすことを必要としている。また、全教員に対して、毎年、教育活動などの調 書の提出を求め、再任審査と同等の教育、研究の実績を確認しており、専任教員として、 担当する専門分野に関する教育上の指導能力と高い見識があると認められる者が配置され – 22 – ている。 授業科目への教員配当については、必修科目の92%が専任の教授または准教授が科目責 任者となっている。非常勤講師が科目責任者を務める科目は2年次の「F(2)科学英語 ⅡC」のみであり、残りは専任教員が科目責任者を務めている。専任教員の年齢構成は、 定年が65歳であることから60歳代は低く、30歳代から50歳代においては30%前後であり、 専任教員の年齢構成に大きな偏りはない。また女性教員の比率は薬学科専任教員では36%、 薬学部全教員では32%である(基礎資料9)。 薬学部における教員の採用および昇任に関しては、「薬学部教育職員任用資格規則」と「薬 学部教育職員選考手続規則」および「薬学部の教員推薦委員会の設置について」を定めて いる。これらの諸規則に基づき、教授の採用は原則として公募で行われている。公募書類 は教授から構成される推薦委員会が作成し、教授会の承認を経て公表される。推薦委員会 は、応募者の任用資格、担当する授業内容に対する妥当性、研究内容、将来に対する展望 などを審議し、その結果を教授会に報告する。候補者には研究、教育についてのこれまで の実績の概要と今後の抱負に関するプレゼンテーション、および模擬授業を行ってもらい、 研究能力、教育能力を判定し、教授会で審議して投票し、採用を決定している。なお、実 務家教員の場合には、薬剤師としての実務歴を採用時の評価に加えている。教員の昇任に ついては、講座主任、センター長、部門主任などが「薬学部教育職員任用資格規則」に照 らして昇任にふさわしいと判断した教員を教授会に推薦し、応募者の任用資格、担当する 授業内容に対する妥当性、研究内容、将来に対する展望などを審議し、結果を教授会に報 告し、教授会で審議して投票により昇任の可否を決定している。このように、教員の採用、 昇任においては、規程に基づいて、適切なプロセスを経て、研究業績のみに偏ることなく、 教育上の指導能力等が十分に反映されて適切に行われている。 専任教員は、教育の実践、教育関連活動事業への参加、研究活動の実践などを通して、 教育および研究能力の維持・向上に取り組むと共に、研究面でも多くの成果を発表してお り、教育目標を達成するための基礎となる研究活動を積極的に行っている(基礎資料15)。 全教員の教育・研究活動は、毎年の薬学部教育・研究年報および慶應義塾研究者データベ ースにより公表されている。実務家教員においては、慶應義塾大学病院薬剤部に薬剤師が 新しい医療に対応するために研鑽できる制度(OJT)があり、専任実務家教員はこの制度 を継続的に利用し、原則週1日薬剤部に行き、薬剤部員と共に調剤業務、診療科の病棟業務 等の実務を行い、研鑽している。また、教員を薬学部附属薬局に保険薬剤師として登録し、 薬局薬剤師としての実務を行う体制(OJT)ができており、薬学部附属薬局に勤務する – 23 – 常勤薬剤師と共に処方箋調剤業務、患者対応業務等を行い、研鑽している。このようなO JT制度が整備され、実行されていることは評価できる。また、教員の研究および外部資 金獲得の支援のために、薬学部に学術研究支援課を設置し、さらに外部資金獲得に特化し た専門員1名を配置している。また、大学として、研究連携推進本部を設置し、外部資金 の獲得を支援している。また、全教員に外部資金の獲得の説明などを含めた研究者マニュ アルを配布している。 研究環境については、全ての講座、センターは研究室を備えているとともに、共同実験 室、共通機器室・実験室、実験動物飼育施設、RI(Radioisotope)実験施設など、薬学 研究に必要な施設が整備されている(基礎資料12)。また、ネットワーク環境も整備されて いる。研究費は、予算助成委員会が管理し、予算配分ルールに基づいて公平に各講座に配 分されている。また、ほとんどの教員は学内外の競争的資金にも応募している。 薬学科専任教員の年間平均の週当たりの授業時間数の平均値は3.6時間であるが(基礎教 育講座の語学の専任教員2名を除くと3.5時間)、薬学教育研究センター、医療薬学・社会 連携センター、基礎教育講座等の教員の授業担当時間数が平均値よりはやや多い。このよ うに、授業時間数には教員間で多少のばらつきはあるが、教員の授業担当時間数が適正な 範囲内となるよう努めている(基礎資料10)。また、講座配属学生数にも上限を設け、教員 間でのばらつきを適正な範囲内になるように努めている(基礎資料11)。 教員の教育研究能力の向上を図るために、薬学部にFD(Faculty Development)委員会 を設置し、FDの企画運営を行っている。薬学部で、FD委員会が主催してFD活動を行 っている(平成27年度は6回の講演会、ワークショップなどの開催)。平成27年度に行われ た6回のFDのうち4回を薬学部全教員を対象として行っており、その参加率は平均87% であった。また、1科目当たり3コマ以上の授業を担当する教員は「授業を改善するため の調査」を行い、学生の授業に対する意見を収集し、総合評価が2.5未満の教員に対しては 薬学部長に改善計画を提出することとしているが、平成27年度はこれに該当する教員はい なかった。 薬学部の事務体制として、事務長の下、総務課、用度課、学生課、学術研究支援課、薬 学メディアセンター、芝共立インフォメーション・テクノロジーセンターなどが設置され ており、事務長以下、大学本部の人事部において、大学職員としての資質および能力を確 認して採用された専任職員、嘱託職員を含めて32名が配置されている。その中には、国際 化推進のため、英語を母国語とする嘱託職員1名がいる。また、研究費獲得支援強化のた めに学術研究支援課に新たに1名を配置している。共同利用研究施設である、薬用植物園 – 24 – に専任職員と業務委託による人員各1名、共同実験室の管理のための機器管理室に専任職 員と派遣職員各1名、動物飼育室を管理するために業務委託による専門家4名が配置され ている。また、教育研究活動支援のために、学部内に多くの専門的な委員会を設置してい るが、それらに職員を参加させることで教員と職員が連携して教育研究の向上を図る体制 を構築している。また、職員は人事交流、人事資格に見合った研修会などを通して、必要 な資質向上を図っている。薬学部附属薬局職員および薬学メディアセンター職員に対して は、専門的な研修を実施して資質向上を図っている。 11 学習環境 本中項目は、適合水準に達している。 慶應義塾大学では、教養教育は日吉キャンパス、薬学部の授業は芝共立キャンパスで主 に行っている。日吉キャンパスでは7学部の日吉所属学生(文・医・薬学部は1年次生、 経・法・商・理工学部は1、2年次生)が学習するための講義室、演習室、学生活動のた めの設備・スペースが十分に確保されている。また、芝共立キャンパスにおいては 224~ 255 名収容の大講義室3室、110~121 名収容の中講義室4室、72 名収容の小講義室2室、 249 名収容のマルチメディア講堂、357 名収容で分割使用もできる講堂があり、講義室の数 と規模は適切である(基礎資料 12)。また、講義室とは別に、参加型学習のための少人数 教育ができる教室として、分割使用できる講堂 1 室、小講義室・セミナー室等7室、医療 系実習室2室が整備されている。1~3年次の実習で使用する実験実習室は2号館の2階、 3階、地下1階にそれぞれ2室あり、各階で2室合わせて1学年全員が一度に実習できる ようになっている。また、コンピューター94 台を設置したマルチメディアコンピュ―ター 室、薬用植物園、動物実験施設、RI実験施設が整備されている(基礎資料 12)。実務実 習事前学習の専用施設として、無菌操作実習のための医療薬学実習室、散剤調剤実習のた めの散薬実習室、水剤調剤実習のための水剤実習室が2号館に設置されている。模擬薬局 はないが、薬学部附属薬局を実務実習事前学習のために利用している(基礎資料 12)。 卒業研究のために学生が配属される各講座については、研究室の面積が約140m2 であり、 そこで、卒業研究のために学生が平均12名程度、大学院生が平均7名程度実験しており、 面積的には決して十分とは言えないが、講座研究室以外に共用スペースを活用して、卒業 研究が行われている。 図書室、資料閲覧室については、薬学部キャンパス内の薬学メディアセンターに図書室、 資料閲覧室が整備されている(基礎資料13、14)。また、同大学では、すべての学生が6つ – 25 – のキャンパスにあるメディアセンターを利用でき、全てのメディアセンターにある文献、 電子データを利用できる。また、薬学部キャンパス内の図書館施設には蔵書約52,000冊、 国内外の専門学術雑誌の冊子体約400誌がある。電子ジャーナルについては、薬学部独自購 入および全塾の共同利用などにより約98,000誌が利用でき、教育研究活動に必要な図書お よび学習資料が整備されている。これに加えて、信濃町メディアセンターも利用できるな ど、総合大学としての図書館設備・資料を自由に利用できる。このように、薬学メディア センターを含め、全キャンパスの図書館設備・資料、電子ジャーナルなど、医療関係をは じめ、総合大学としての資料・情報が充実しており、またそれらの図書館設備・資料を自 由に利用できる点は高く評価できる。 自習室については、薬学メディアセンター3階閲覧室に127席、3階グループ学習室に12 席、3階PCエリアに8席の学習・閲覧席があり、昼食時を除いた時間帯では学生ホール の201席も自習スペースとして開放されている。さらに、定期試験期間および薬剤師国家試 験前には2つの講義室(各110席)も自習室として開放されている。また、日吉キャンパス には、さらに規模の大きい1,338席の閲覧席が整備されている。図書館施設の開館時間は平 日8時45分~21時、土曜日は9時~17時である。 12 社会との連携 本中項目は、適合水準に達している。 慶應義塾大学薬学部の多くの専任教員は、医療・薬学関連の学会や団体の役員等として 活動していて、医療および薬学の発展に努めている。また、企業からの受託研究等により、 産業界と連携して研究を行い、医療および薬学の発展に努めている(基礎資料15)。地域の 医薬界の関係団体および行政機関との連携については、東京都薬剤師会の理事、東京都薬 剤師会、東京都病院薬剤師会などの各種委員会委員、厚生労働省、文部科学省などの行政 機関の各種委員会委員等として活動し、それぞれの機関、団体と連携を図っている。また、 薬学部のある港区薬剤師会主催の研究会への講師派遣および会場の提供等により、地域の 薬剤師会、病院薬剤師会、医師会などの関係団体との連携、協力を図っている(基礎資料 15)。 薬学部は、医療薬学・社会連携センターを中心に、薬剤師の資質向上を図るための生涯 学習プログラムの提供を、共立薬科大学時代の50年前から継続的に行っており、現在認定 薬剤師研修制度、公開講座、薬剤師継続学習通信講座を行っている。また、本薬学部は薬 剤師認定制度認証機構より認定薬剤師研修機関として認証を受け、慶應義塾大学薬学部認 – 26 – 定薬剤師の認定を行うことができ、共立薬科大学からの通算で172名の認定者を輩出してい る。また、地域住民に対して、「健康づくり教室」を学生も参加して開講し、教員は運動指 導などとともに、健康に関する講話を実施している。さらに、地域における保健衛生への 支援活動として、教員が港区の芝危険物安全協会の理事として参画し、地域の危険物に関 する安全意識啓発に寄与している。また、自由科目である「薬学生のための体験学習プロ グラムB」の中で、履修した学生が港区主催の「障がい者が充実した社会生活を送るため の学習機会を提供する活動」に参加するプログラムを開講している。 国際交流に関しては、英文によるホームページを開設しており、世界へ情報を発信する よう努めている。また、薬学部の国際交流委員会が中心となって、国際交流セミナーを開 講している。さらに、米国の4大学、タイの1大学と学部間協定を締結し、学術交流およ び学生間交流を行っており、これに参加して基準以上の評価を得た本薬学部の学生は「ア ドバンスト海外病院実習」の単位を取得することができる。最近5年間では派遣した学生 が41名、受け入れた学生が30名で、平成27年度はそれぞれ5名、8名であった(「自己点検・ 評価書」 p.101 12-2表1)。また、医療系三学部合同で、ラオスにおける地域医療チー ムへの参加プロジェクトを実施しており、平成27年度は5名の学生が参加した。さらに、 レギュラトリーサイエンスを学ぶためのプログラムとして、米国に2週間滞在して米国食 品医薬品局などを訪問し、研修を行っている。平成27年度は4名の学生が参加している。 最近5年間で海外留学した薬学部教員は5名である。 13 自己点検・評価 本中項目は、薬学部における教育研究の向上・発展を目指す、恒常的な点検評価プログ ラム(教育研究の改善を目指すPDCAサイクル)を稼働させる適切な自己点検・評価組 織が設置されていないので、適合水準に達していない。 慶應義塾大学薬学部では、自己点検・評価を行う組織として、「第三者評価委員会」(以 前は自己点検・評価委員会)を設置し、毎年、継続的に自己点検・評価を実施し、薬学部 教育・研究年報として、薬学部のホームページに公表されている。ただし、この「第三者 評価委員会」は、一般的に理解されている第三者評価委員会(内部関係者以外の外部の委 員から構成される外部評価組織)とは考えられず、名称が不適切である。また、「自己点検・ 評価書」の前書き部分に記載されている「第三者評価委員会」は、本評価に対応する目的 で組織されたものであると思われ、この委員会が薬学教育評価の恒常的な点検・評価を行 っているという説明はない。いずれにしても、この委員会を以前の名称に戻し、学外委員 – 27 – を加えた恒常的な組織とすることを検討する必要がある。 現状で薬学部が行っている自己点検・評価では、講座、センターごとに行っている、担 当授業の概要、研究概要、研究実績などについての自己点検・評価と、評価項目を設定し た学部全体での基礎データに対する自己点検・評価を行っている。これらは、多くの大学 が行っている、個々に定めた目標に対する業務の自己評価であって、本評価基準が求めて いる、6年制薬学教育プログラム全体に関わる点検・評価ではなく、本評価基準で求めら れている自己点検・評価が実効性をもって、恒常的に行われているとは言い難い。 自己点検・評価の結果を教育研究活動に反映するために、自己点検・評価の結果は担当 する委員会で検討し、教育研究活動に反映させる体制となっているとされており、平成23 年度の自己点検・評価の結果に基づいて教育研究上の目的を審議、決定し、学則に記載し たことを成果の実例としている。しかし、上述したように、本評価の基準が求めているの は、6年制薬学教育プログラム全体に対する恒常的な点検・評価であり、そこで見出され た結果を教育研究活動の改善に反映させるように、PDCAサイクルが実質的に稼働する 体制の構築とそのPDCAサイクルの具体的な実施である。この「自己点検・評価書」の 記載内容からは、そのような意味での自己点検・評価の成果を生かした活動の成果を見出 すことはできない。 Ⅳ.大学への提言 1)長所 1. 「医療系三学部合同教育の初期プログラム」は、非常に有効なものとして評価できる。 (3.医療人教育の基本的内容) 2. 3年次の「A(3)生命の大切さを知るために3(患者から学ぶ)」は、多様な患者に加 え、障がい者や薬害被害者の講演を中心とした特徴的な科目であり、方略レベルでの 独自性が評価できる。(3.医療人教育の基本的内容) 3. 5~6年次には卒業研究、アドバンスト病院実習などが設置され、学生個々の能力・ 意欲にあわせた一段高い目標を設定する機会が与えられている。(4.薬学専門教育 の内容) 4. 大学独自の薬学専門教育として選択必修科目「アドバンスト病院実習」、「アドバンス ト海外病院実習」、「Introduction to overseas clinical rotation」、「Case Study Practice」、などの意欲的な取り組みがなされている。(4.薬学専門教育の内容) – 28 – 5. 米国の4大学、タイの1大学と学部間協定を締結し、相互に学生の短期留学プログラ ムを実施し、国際交流の活性化のための活動が行われている。(12.社会との連携) 2)助言 1. 学生の生涯教育への参加は自主的であり、生涯学習に対する意欲を醸成するための教 育が体系的に行われることが望ましい。(3.医療人教育の基本的内容) 2. ヒューマニズム教育・医療倫理教育、コミュニケーション力に関わる個々の科目につ いて、目標到達度を評価するための指標を設定し、適切に評価することが望ましい。 (3.医療人教育の基本的内容) 3. 大学独自の科目は、シラバスの「対応するコア・カリの項目」欄を空白にしているだ けであり、学生が独自科目であることに気づきにくい。独自科目であることをシラバ スに積極的に明示することが望ましい。(4.薬学専門教育の内容) 4. 「卒業研究B」を履修している学生は、他の能動的学習法を行っている科目を加えて も問題解決能力の醸成を目指す教育の総単位数が18単位には満たないので、能動的学 習の充実が望まれる。(6.問題解決能力の醸成のための教育) 5. 視覚障がい者等に対する設備上の配慮を充実させること、建物のバリアフリー化をさ らに進めることなど、障がい者のための施設・整備をさらに進めることが望ましい。 (9.学生の支援) 6. 学生実習室および研究室における学生の安全を確保するために必要な設備のさらなる 充実が望ましい。(9.学生の支援) 7. 自己点検・評価を行う委員会には、外部委員を含めることが望ましい。(13.自己 点検・評価) 3)改善すべき点 1. ヒューマニズム教育・医療倫理教育およびコミュニケーション教育の学修成果を総合 して、それらの教育の目標達成度を評価する指標を設定し、それに基づいた適切な評 価を行う必要がある。(3.医療人教育の基本的内容) 2. 実務実習事前学習において、総合した事前実習全体としての目標達成度を評価するた めの指標は設定されておらず、指標を設定して適切に評価する必要がある。(5.実 務実習) – 29 – 3. 問題解決能力の醸成に向けた教育において、目標達成度を評価するための指標を設定 し、それに基づいて適切に評価することが必要である。(6.問題解決能力の醸成の ための教育) 4. 卒業研究の最終的な評価は指導教員だけで行っているので、評価の基準と客観性を保 証する仕組みを確立することが必要である。(6.問題解決能力の醸成のための教育) 5. 点数と評価との対応が各科目の担当者の裁量に委ねられており、科目間で評価の公平 性が保証されていないことが懸念されるので、点数と評価との対応を明確に規定する ことが必要である。(8.成績評価・進級・学士課程修了認定) 6. 演習、実習科目のシラバスに、合格基準を明記することが必要である。(8.成績評 価・進級・学士課程修了認定) 7. 複数の評価項目がある科目において、最終成績に対する個々の評価項目に適正な寄与 率を設定し、明示することが必要である。また、出席を評価項目に含める科目は授業 への参加が学習成果に直結するものに限定し、出席から学習成果を評価する指標を設 けることが必要である。(8.成績評価・進級・学士課程修了認定) 8. 「総合薬学演習Ⅱ」については、追再試験に当たる4次試験の合格基準をあらかじめ 明示しておくことが必要である。(8.成績評価・進級・学士課程修了認定) 9. 現状の「第三者評価委員会」は、名称、委員構成から外部機関による第三者評価への 対応を目的に組織されたものと判断され、学部の自己点検・評価組織として適切では ないので、この目的に合った名称と委員構成の組織を早急に構築することが必要であ る。(13.自己点検・評価) 10. 前項で提言した自己点検・評価体制を活用して、薬学部における教育研究の向上・発 展を目指す、恒常的な点検評価プログラム(教育研究の改善を目指すPDCAサイク ル)を稼働させることが必要である。(13.自己点検・評価) – 30 – Ⅴ.認定評価の結果について 慶應義塾大学薬学部(以下、貴学)薬学科は、平成26年度第一回全国薬科大学長・薬学 部長会議総会において、平成28年度に薬学教育評価機構(以下、本機構)による「薬学教 育評価」の対象となることが承認されました。これを受けて貴学は、平成27年度に本機構 の「薬学教育評価 評価基準」(以下、「評価基準」)に基づく6年制薬学教育プログラムの 自己点検・評価を実施し、その結果をまとめた「調書」(「自己点検・評価書」および「基 礎資料」)と添付資料を添えて「薬学教育評価申請書」を本機構に提出しました。 Ⅰ~Ⅳに記載した内容は、本機構が上記により貴学が提出した「調書」に基づいて行っ た第三者評価(以下、本評価)の結果をまとめたものです。 1)評価の経過 本評価は、本機構が実施する研修を修了した5名の評価実施員(薬学部の教員4名、現 職の薬剤師1名)で構成する評価チームによるピア・レビューを基本にして行いました。 まず、個々の評価実施員が「調書」に基づいて「評価基準」の達成状況を検証して所見 を作成し、それらを評価チーム会議で検討して評価チームの所見をとりまとめる書面調査 を行いました。評価チームは、書面調査の所見を整理した結果に貴学への質問事項などを 加えた「評価チーム報告書案」を作成し、これを貴学に送付して、質問への回答と「評価 チーム報告書案」に対する貴学の意見(第1回目のフィードバック)を求めました。 評価チームは、貴学からの回答と追加された資料、並びに「評価チーム報告書案」に対 する意見を検討して「評価チーム報告書案」の所見を修正し、その結果を踏まえて訪問調 査を実施しました。訪問調査では、書面調査では十分に評価できなかった点を含めて貴学 の6年制薬学教育プログラムの状況を確認することを目的に、「訪問時閲覧資料」の閲覧、 貴学との意見交換、施設・設備見学と授業参観、並びに学生および若手教員との意見交換 を行いました。訪問調査を終えた評価チームは、訪問調査で得た情報と書面調査の所見を 総合的に検討し、「評価チーム報告書」を作成して評価委員会に提出しました。 「評価チーム報告書」の提出を受けた評価委員会は、評価チームの主査を含めた拡大評 価委員会を開いて、評価チームの判断を尊重しつつ、大学間での「評価結果」の偏りを抑 えることを目指して「評価チーム報告書」の内容を検討し、その結果をもとに「評価報告 書(委員会案)」を作成しました。次いで、評価委員会は「評価報告書(委員会案)」を 貴学に送付し、事実誤認および誤解を生じる可能性がある表現などに対する「意見申立て」 (第2回目のフィードバック)を受けました。 – 31 – 評価委員会は、申立てられた意見を検討し、その結果に基づいて「評価報告書(委員会 案)」を修正するための拡大評価委員会を開催し、「評価報告書原案」を確定しました。 本機構は「評価報告書原案」を、外部有識者を含む評価の最高意思決定機関である総合 評価評議会において慎重に審議し、「評価報告書」を確定しました。 本機構は、「評価報告書」を貴学に送付するとともに社会に公表し、文部科学省および厚 生労働省に報告します。 なお、評価の具体的な経過は「4)評価のスケジュール」に示します。 2)「評価結果」の構成 「評価結果」は、「Ⅰ.総合判定の結果」、「Ⅱ.総評」、「Ⅲ.『中項目』ごとの概評」、「Ⅳ. 提言」で構成されており、それらの意味は以下の通りとなっています。 「Ⅰ.総合判定の結果」には、貴学の薬学教育プログラムが総合的に本機構の「評価基 準」に適合しているか否かを記しています。 「Ⅱ.総評」には、「Ⅰ.総合判定の結果」の根拠となった貴学の薬学教育プログラム の本機構の「評価基準」に対する達成状況を簡潔に記しています。 「Ⅲ.『中項目』ごとの概評」には、「評価基準」を構成する 13 の『中項目』ごとに、 それぞれの『中項目』に含まれる【基準】・【観点】に対する充足状況の概要を記していま す。 「Ⅳ.提言」は、「評価結果」に関する本機構からの特記事項で、「1)長所」、「2) 助言」、「3)改善すべき点」に分かれています。 「1)長所」は、貴学の特色となる優れた制度・システムであり、教育研究上の実績が 他大学の模範となると期待されるものです。 「2)助言」は、「評価基準」を達成する最低要件は充たしているが、目標を達成する ためには改善が望まれることを示すものです。「助言」の内容に対する改善の実施は貴学の 判断に委ねますが、個々の「助言」への対応状況についての報告書の提出が必要です。 「3)改善すべき点」は、「評価基準」が求める最低要件を充たしていないと判断され た問題点で、貴学に対して「評価基準」を達成するための改善を義務づけるものです。「改 善すべき点」については、早急に改善に取り組み、「評価基準」を達成したことを示す成果 を「提言に対する改善報告書」として所定の期限内に本機構に提出することが必要です。 本「評価結果」は、貴学の「自己点検・評価書」および「基礎資料」に記載された、評 価対象年度である平成 27 年度における薬学教育プログラムを対象にしたものであるため、現時点ではすでに改善されているものが提言の指摘対象となっている場合があります。な お、別途提出されている「調書」の誤字、脱字、数値の誤記などに関する「正誤表」は、 本「評価報告書」、「調書」を本機構のホームページに公表する際に、合わせて公表します。 3)提出資料一覧 (調書) 自己点検・評価書 薬学教育評価 基礎資料 (添付資料)  School Guide 2015-2016  CAMPUS GUIDE 2015  平成 27 年度薬学部履修案内  平成 27 年度開講科目一覧(日吉)  2015 年度薬学部ガイダンス資料  2015 薬学部シラバス  2016 薬学部シラバスの 2 年次科目  新カリキュラム 3〜6 年次のシラバス  2015 年度時間割表  2015 年度薬学部第 1 学年授業時間割  2016 年度一般入学試験要項  2016 年度指定校推薦による入学者選抜要項  2016 年度帰国生対象入学試験募集要項  2016 年度外国人留学生対象入学試験募集要項  入試資料 2016  受験生のみなさまへ 2016  平成 27 年度学部学則  平成 26 年度学部学則  2014 薬学部シラバス  平成 27 年度薬学科早期実習実習書  平成 27 年度実務実習事前学習実習書 – 33 –  医療系学部実習前検査ハンドブック  実務実習指導・管理システムマニュアル(大学教員用)  平成 27 年度慶應義塾大学薬学部実務実習ハンドブック  実務実習指導・管理システムマニュアル(実習生用)  平成 26 年度実務実習報告書(病院編)  平成 26 年度実務実習報告書(薬局編)  学生相談室パンフレット  慶應義塾大学奨学金案内  慶應義塾ハラスメント防止委員会広報資料  CALAMVS GLADIO FORTIOR 2015(塾生案内)  就活事典 2015  薬学部教育・研究年報 2014  RESEARCH HANDBOOK 2015  公的資金を正しく使用するために  公的資金マニュアル  慶應義塾ホームページ 塾長訓示  慶應義塾ホームページ 各学部における 3 つの方針  薬学部ホームページ 薬学部の理念・目的  共立薬科大学 平成 19 年度シラバス p1  慶應義塾大学 2008 薬学部シラバス p1  薬学部運営委員会内規  平成 27 年度諸委員会委員一覧  薬学部カリキュラム委員会規則  慶應義塾ホームページ 医療系三学部合同教育  研究倫理集中演習プログラム  平成 27 年度ファシリテーター養成ワークショップ資料  慶應義塾ホームページ 平成 27 年度医療系三学部合同教育 FD ワークショップ 2015 報告書  薬学部ホームページ 学習支援 IT ネットワークシステムの構築  薬学生の実践的な情報利活用・プレゼンテーション能力の醸成  生命の大切さを知るために-3(患者から学ぶ) 生命倫理 最終発表会評価表  早期体験学習授業資料  平成 27 年度実務実習事前学習 医療における倫理 個人用ワークシー ト  平成 27 年度実務実習事前学習 入院患者への服薬指導 学生間評価表、SP 評価表  慶應義塾ホームページ スーパーグローバル事業  薬学部 1 年アンケート  指定校推薦による入学者に対する課題提出についての連絡  薬学科早期実習の資料  C15(3)テーラーメイド薬物治療を目指して 講義資料  医療薬学・社会連携センター規程  薬学部ホームページ 生涯学習  2015 年度公開講座案内(在学部生・院生用)  2015 年度公開講座受講者集計表  平成 27 年度実務実習事前学習担当  平成 27 年度実務実習事前学習 スケジュール表  平成 27 年度実務実習事前学習教員別指導日数一覧  平成 27 年度実務実習事前学習 SA・TA 稼働時間数  平成 27 年度実務実習事前学習 セルフメディケーションと受診勧奨  平成 27 年度実務実習事前学習 アドバンスト服薬指導  平成 27 年度実務実習事前学習 感染制御実習  平成 27 年度事前学習症例集  平成 27 年度実務実習事前学習 総合実習学生配布資料  平成 27 年度実務実習事前学習 総合実習説明資料  平成 27 年度実務実習事前学習提出物一覧  平成 27 年度薬学共用試験実施に向けて  薬学部ホームページ 薬学共用試験(CBT・OSCE)  平成 27 年度 SA 説明資料  薬学共用試験 OSCE 学習・評価項目および医薬品リスト第 9 版  薬学共用試験 OSCE を受験する皆さんへ  2015 年 OSCE 注意事項  平成 27 年度 OSCE 開催に伴う入構制限について – 35 –  薬学共用試験の守秘等に関する誓約書  CBT 体験受験実施について  平成 27 年度薬学共用試験 CBT 実施の手引き/実施マニュアル A および B  平成 27 年度薬学共用試験 CBT 実施の手引き/実施マニュアル D  慶應義塾大学薬学共用試験実施対応マニュアル  平成 27 年度 CBT 体験受験実施要領  CBT 本試験実施について  平成 27 年度 CBT 本試験実施要領  平成 27 年度 CBT 再試験実施要領  実務実習第Ⅱ期開始にあたってのお願い  教員訪問時の確認情報・連絡シート、医療薬学・社会連携センター実務 実習データベ ース内の訪問報告書  平成 27 年度の実務実習説明会・報告会の式次第  実習施設希望調査  平成 28 年度実務実習施設  実習病院と大学との契約書  学部学生の薬局実習に関する委受託契約書  平成 27 年度第Ⅱ期慶應義塾大学薬学部生実務実習指導ローテーション表  平成 27 年度第Ⅰ期実務実習説明会・平成 26 年度第Ⅱ期・第Ⅲ期実務実 習報告会 式 次第、実務実習指導・管理システム説明資料、タイムスケ ジュール  平成 27 年度第Ⅱ期実務実習説明会・平成 27 年度第Ⅰ期実務実習報告会 式次第、実務 実習指導・管理システム説明資料、タイムスケジュール  実務実習開始にあたってのお願い、実務実習中のアドバイザーの役割、アドバイザー 訪問時の確認情報・連絡シート等  実務実習施設の最終プレゼンテーション開催日について  病院・薬局等における実習等の誠実な履行ならびに個人情報および病院・薬局等の法 人機密情報の保護に関する説明文書と誓約書  諸規則の遵守・守秘義務等に関する誓約書  平成 27 年度実務実習説明会学生説明用資料  実務実習指導・管理システム説明資料  実務実習中のアドバイザーの役割 平成 27 年度実務実習自己評価シート  平成 27 年度実務実習報告ポスターおよびプレゼンテーションの評価表  実務実習に関するアンケート(病院用、薬局用、学生用、学内教員用)  平成 27 年度学事日程  薬学科 6 年生の卒業論文提出について  卒業研究評価シート  6 年生の卒業研究のポスター発表および要旨集と誓約書の提出について  平成 27 年度卒業研究発表会(薬学科)プレゼンテーションへのフィードバック・ガイ ド  薬学部ホームページ 薬学部オープンキャンパス  ファーマサイエンスショートコース広報資料  転学科ガイダンス資料、転学科試験資料  試験結果の発表  保証人宛成績送付状  アドバイザー制度について  2015 年度新入生説明資料教務関係  2015 年度原級者ガイダンス資料  2015 年度新入生説明資料薬学部長  2015 年度新入生説明資料学生関係  2015 年度日吉のオリエンテーション  薬学部ホームページ 芝共立キャンパス学生相談室  慶應義塾ホームページ 奨学制度総合案内  薬学部薬学科学生への奨学金の給付・貸与状況  慶應義塾ホームページ 学生相談室  薬学部ホームページ 芝共立キャンパス学生相談室 学生相談室ニュー ス  薬学部教員と芝共立学生相談室カウンセラーとの懇談会配布資料  慶應義塾ホームページ 保健管理センター芝共立分室  慶應義塾ハラスメント防止委員会規程  慶應義塾ホームページ 慶應義塾ハラスメント防止委員会  1 年生薬学科・薬科学科早期体験学習補講実施概要および資料  2015 年度就職ガイダンス日程 – 37 –  2015 年度将来像研究セミナー  就職ガイダンス等の資料  2015 年度ランチョンセミナー一覧  薬学部ホームページ 進路(資格・就職)  授業を改善するための調査  平成 27 年度 4 年生薬学科卒業研究行事予定とアドバンスト病院実習に ついて  2015 年度薬学基礎実習(分析化学系)実習書 p14、2015 年度薬学実習ⅡA(化学・物 理系)実習書 p14  SA/TA/RA および実習アルバイトに関する規則  避難経路図  芝共立キャンパス 救急時の対応  学生が加入する保険に関する資料  慶應義塾芝共立キャンパス消防計画等  大地震対応マニュアル  実務家教員一覧  慶應義塾大学薬学部教育職員任用資格規則  慶應義塾大学薬学部教育職員選考手続規則  慶應義塾大学薬学部の教員推薦委員会の設置について  薬学部ホームページ ―教員公募情報  慶應義塾大学薬学部における教員の任期に関する規程  再任審査に関する取り決め  薬学部ホームページ 教育・研究年報  薬学部ホームページ 受賞・顕彰  慶應義塾ホームページ K-RIS  慶應義塾大学病院薬剤部での OJT の報告書  薬学部附属薬局への教員の薬剤師登録  慶應義塾ホームページ keio.jp  慶應義塾ホームページ 研究連携推進本部  FD に関する資料  職員研修一覧  薬学に特化した薬局・メディアセンター職員研修一覧 慶應義塾ホームページ 芝共立 ITC マルチメディアパソコン室  薬学部ホームページ 薬用植物園  2 号館 B2F 平面図  実験動物施設 P1A レベル 飼育状況  RI 実験施設資料  共通機器室の研究機器一覧  平成 27 年度講座配属定員数(薬学科 4 年)  慶應義塾ホームページ 慶應義塾大学メディアセンター(図書館)  慶應義塾ホームページ 日吉メディアセンター  慶應義塾ホームページ 薬学メディアセンター  慶應義塾ホームページ 信濃町メディアセンター  平成 26 年度メディアセンター標準統計(日吉)施設・設備  平成 26 年度メディアセンター標準統計(日吉)蔵書数  平成 26 年度メディアセンター標準統計(薬学)施設・設備  平成 26 年度メディアセンター標準統計(薬学)蔵書数  平成 26 年度メディアセンター標準統計(薬学)逐次刊行物  平成 26 年度メディアセンター標準統計(薬学)電子媒体資料(利用)  慶應義塾ホームページ KOSMOS  慶應義塾ホームページ 2015 年度薬学メディアセンター利用案内  平成 27 年度港区薬剤師会第 1 回地区研修会資料  認証状 G04  公開講座平成 27 年度受講者数・単位数等  平成 27 年度公開講座・薬剤師継続学習通信講座ご案内  平成 27 年度「健康づくり教室」のご案内  健康づくり教室講話資料  薬学部英文ホームページ  平成 27 年度国際交流セミナーの案内  慶應義塾ホームページ 留学フェア 2015 開催  慶應義塾ホームページ 留学フェア 2015 後記  平成 27 年度アドバンスト病院実習ガイダンス資料  2015 ACCP Global Conference on Clinical Pharmacy Abstract p351-352 – 39 –  慶應義塾大学医療系三学部 ラオス・プライマリヘルスケア保健医療 チーム活動プロ ジェクト 2015 年度募集要項  専任教職員の国外留学に関する規程および同細則  慶應義塾留学生として国外留学した教員の一覧  薬学部ホームページ 自己評価、第三者評価  慶應義塾ホームページ 2011 年度点検・評価報告書 4)評価のスケジュール 貴学の薬学教育プログラム評価を以下のとおり実施しました。 平成27年1月23日 日本薬学会長井記念館会議室において、貴学より担当者3名の出席のも と本評価説明会を実施 平成28年4月11日 貴学より調書の草案の提出。機構事務局は内容を確認 4月28日 5月20日 機構事務局より貴学へ草案の確認終了を通知 貴学より「薬学教育評価申請書」の提出。機構は貴学へ受理を通知 5月23日 貴学より評価資料(調書および添付資料)の提出。機構事務局は各評価 実施員へ評価資料を送付、評価実施員は評価所見の作成開始 ~8月1日 評価実施員はWeb上の薬学教育評価管理システムに各人の評価所見 を入力。主査はWeb上の各実施員の評価所見を基に「評価チーム報告 書案」の素案を作成 8月2日 評価チーム会議を開催し、Web上で共有した主査の素案を基に「評価 チーム報告書案」を作成 8月15日 評価チームは「評価チーム報告書案」を機構事務局へ提出。機構事務局 より貴学へ「評価チーム報告書案」を送付 9月5日 貴学より「評価チーム報告書案に対する確認および質問事項への回答」 の提出。機構事務局はその回答を評価チームへ通知 9月24日 評価チーム会議を開催し、貴学からの「評価チーム報告書案に対する確 認および質問事項への回答」を検討し、訪問時の調査項目を確認 10月19・20日 貴学への訪問調査実施 10月31日 評価チーム会議を開催し、「評価チーム報告書」を作成 11月28日 評価委員会(拡大)を開催し、「評価報告書(委員長案)」を検討後、 承認 12月12日 評価委員会を開催し、承認された「評価報告書(委員長案)」を決定 12月19日 評価委員会委員長・副委員長会議を開催し、決定された「評価報告書(委 員長案)」を、最終的に文言を整え「評価報告書(委員会案)」大学送 付版を作成 – 40 – 平成29年1月6日 機構事務局より貴学へ「評価報告書(委員会案)」を送付 1月25日 貴学より「意見申立書」を受理 2月7日 評価委員会(拡大)を開催し、意見申立てに対する「回答書」を検討 2月14日 2月20日 評価委員会を開催し、「回答書」および「評価報告書原案」を作成 機構事務局より貴学へ意見申立てに対する「回答書」を送付 2月24日 「評価報告書原案」を総合評価評議会へ提出 3月2日 総合評価評議会を開催し、「評価報告書」を決定 3月10日 機構事務局より貴学へ「評価報告書」を送付